HJTKG

小野工場長です。

先程、晩飯を食おうとした時でした。
何気なく開けた冷蔵庫の下の段に義母からもらった半熟卵が残っていることに気づいたのです。
早いとこ始末しないと腐らせてしまうので久方ぶりにアレをやりました。

半熟卵かけご飯with七味です。

アレと言っても私にしか通用しませんが。

わざわざTKGをやるのに半熟でなおかつ七味をかけるなど、よほどのこだわりがあるのだろうと思われるかもしれませんが、実はこれ学生時代に培った食事テクニックなのです。

当時、私は実家から仙台にある大学に毎日のように片道1時間半強かけて通っていました。
父親と弟も仙台に職場、学校があったので、三人で朝6時の高速バスを利用していたのです。
必然的に大学に着くのは8時前、そこでようやく私の朝食が始まるのでした。

我等が母校の学食はそれはそれは評判が悪かったです。
業者が撤退してしまうから利用しろと学校側から言われ、外部の利用者からは学食の割に高くないか、と言われる始末でした。
今思い返しても、バランスはさておき腹を満たす分ならコンビニのほうがポイントが付くのではないか、と思えるようなものですが、朝の定食に限ってはどこにも負けないものがありました。

その名も卵かけ定食(当時で200円)です。

メニューは ご飯普通盛り、味噌汁、小鉢(3種類程度から選択、早いもの勝ち)、半熟卵 でした。

これがもうなんとも学生たる生き物のカネの無さを物語るものか、とにかく貧乏性でカネのない私には唯一の拠り所でした。
メニューを見ればええやんと思うかもしれませんが、そこは学食も学生への供給と利潤確保の結果なのでしょう。

TKGの主役たる卵とそれを受け止める米がまずい。

半熟卵は消化に良いものですが、こんなもんになるならかえってゆで卵で出してもらったほうがいいと思えるようなものでした。
米に関しては残念な事に生まれてこの方米どころ宮城のひとめぼればかり食してきたものですから、あの業務用米の味の悪さたるや、最後まで辟易してました。
そして学生の健康という観点からでしょう、醤油は減塩のみ。これも安いもんだからTKGのバランスを乱すばかりでさっぱり美味くないのです。

じゃあ他を食えばええやんとも思うでしょうが、この値段でバランス良く、それなりに腹持ちがいいものは他にありません。
そうすると人間というのは流石は猿から進化した生き物、あの手この手で味を良くしようとするものです。
塩を足してみたり、小鉢も混ぜてみたり、TKG用のタレを持ち込んでみたり、挙げ句味噌汁に卵をぶち込んでみたり… それでもいいと思えるものにはなりませんでした。

ちょうどその頃です、薬味の良さに気づいたのは。
刺し身や蕎麦のワサビ、おでんや焼売のカラシ、タバスコ、紅生姜…
それにヒントを得て始めたのが七味を足す、ただそれだけです。
普段は蕎麦が注文された時に足されるかもしれない、そんな程度の存在でしかなった七味がここのTKGには革命児として登場した、私はそう感じました。

サッと振るだけで壊滅的だったTKGが平定されました。七味の香ばしさが業務米の味の悪さをかき消し、卵のやさしいまろやかさを際立たせ、程よい辛味がボケた醤油の味を目覚めさせる。
新たなる朝の始まりした。

因みに小鉢は量が少なかったですがどれも味は良かったです。味噌汁は普通でした。

そうした思い出に浸りつつ今日のTKGを嗜むのですが、どうやってもあの日々に感じていた味とは違います。
米は大盛りで栗原のひとめぼれになりました。醤油は濃口、卵は贅沢に2つ、それでもあの味を超えるものには感じません。
あの時から私は何を手に入れ、何を失ったのでしょうか。

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